2022年度の投資ファンド業界の実際のM&A事例を紹介いたします。
【同業種間のM&A事例】
■2023年1月にサクセッション2号投資事業有限責任組合が特研工業を買収
譲渡企業 |
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特研工業 |
鳥取県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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サクセッション2号投資事業有限責任組合 |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
あおぞら銀行と日本アジア投資(JAIC)の折半出資で設立されたサクセション1号投資事業有限責任組合は、2022年12月26日に鳥取県米子市の特建工業に出資し、経営権を取得しました。道路舗装、河川改修、砂防、公共・民間建築物の外構工事、太陽光パネルの基礎工事、宅地造成など、公共土木の機能を担う土木工事会社です。また、防衛省、鳥取県、米子市から高い評価(A評価)を得ています。このように、AJキャピタルは、あおぞら銀行やJAICの消費者を活用し、経営体制や人材、サービスを鍛え、強化することで、円滑な事業承継を図ってまいります。
■2022年10月にアドバンテッジパートナーズがネットジャパンを買収
譲渡企業 |
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ネットジャパン |
東京都 |
未上場 |
その他小売業界 |
譲受企業 |
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アドバンテッジパートナーズ |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
アバンテッジパートナーズ(AP、東京)は、1937年創業のプラスチック成形・二次加工業の大豊工業(大阪府守口市)に投資し、ファンドを運営しています。国内に加え、アジア・欧米に10を超える生産拠点を有しています。製品は家電、自動車、OA機器、住宅関連 機器などの幅広い産業で使われています。APファンドは、事業担当者とともに会社を推進することに専念し、予定されている株式公開を支援する予定です。
■2022年10月に日本投資ファンドが三興商事を買収
譲渡企業 |
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三興商事 |
東京都 |
未上場 |
その他販売・卸業界 |
譲受企業 |
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日本投資ファンド |
東京都 |
東証未上場 |
その他金融業界 |
2012年10月4日、日本M&Aセンターと日本政策投資銀行(DBJ)の共同出資による日本投資ファンド1号投資事業有限責任組合(JIF1)が、建築資材を扱う三光商事(静岡市)の株式の過半数を主幹事から取得しました。三光商事は1971年に設立され、建築に関する構想・資材調達からプロジェクトマネジメントまで幅広いサービスを提供し、専門性の高い営業手法で多くの顧客基盤を有しています。今後、ジャパンインベストメントファンドは、関東・中部地区での事業展開を目指します。
■2022年9月にクレアシオン・キャピタルがヴィストを買収
譲渡企業 |
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ヴィスト |
石川県 |
未上場 |
サービス業界 |
譲受企業 |
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クレアシオン・キャピタル |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
投資会社のクレアシオン・キャピタル(東京)は、管理・運営するファンドが出資するKXホールディングス(同)を通じて、障害のある成人への就労支援施など運営の、ヴィスト(金沢市)を買収しました。KXHDは、北陸地方で計15カ所のセンターを運営し、児童補導、放課後等デイケア、つなぎ・延長就労支援施設などを手がけています。KXHDは、障がい者支援を行うウェルファリズムの事業群を統括する企業です。未就学児から成人までの健康管理、トレーニング、成人の障害者向け就労支援など、幅広いサービスを提供しています。KXHDは、幼児から成人までの幅広い障がい者を対象に、治療や指導、就労支援など、さまざまなサービスを提供します。
■2022年9月に地域ヘルスケア連携基盤が高橋薬局を買収
譲渡企業 |
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高橋薬局 |
静岡県 |
未上場 |
その他小売業界 |
譲受企業 |
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地域ヘルスケア連携基盤 |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
ユニゾン・キャピタル(東京)の投資先でヘルスケア分野での経営支援を行う地域ヘルスケア連携基 盤(CHCP、同)は、グループ会社を通じて、調剤薬局運営の高橋薬局(静岡県熱海市) を7月14日付でグループ化、株式を取得ました。CHCPグループは、地域医療モデル(2022年7月14日公表)の主体である調剤薬局を支援し、シナジーを発揮することで、地域レベルの新しい医療サービスを構築していきます。
■2022年8月にJ-STAR No.4 A,LPが小島水産を買収
譲渡企業 |
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小島水産 |
高知県 |
未上場 |
その他販売・卸業界 |
譲受企業 |
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J-STAR No.4 A,LP |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
J-STAR(東京)の金融サービス事業者である J-STAR No.4 A, LP は、J-STAR が出資する親会社を通じ、養殖魚の生産・包装・流通を行う水産飼料会社、小島水産 (高知県須崎市)へ出資いたしました。また、J-STARは児島水産の成長計画にも協力していきます。
■2022年6月に野村キャピタル・パートナーズがレスプリを買収
譲渡企業 |
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レスプリ |
東京都 |
未上場 |
化学業界 |
譲受企業 |
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野村キャピタル・パートナーズ |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
野村ホールディングス傘下の野村キャピタルパートナーズは、野村キャピタルパートナーズ1号投資事業有限責任組合を通じ、レスプリ(L’ESPRIT)と資本提携しました。同事業は、「LIPPS」ブランドのヘアケア・男性用化粧品の製造・販売を中心とした事業です。1999年、LESPRIからLIPPSにブランド名を変更し、東京・原宿にショップをオープンしました。NCAPは、メンズアピアランスのパイオニアとして、グループ内外の幅広い人脈を生かし、メンズアピアランスの普及に努めています。
■2022年6月に日本産業推進機構運営ファンドがクラフツを買収
譲渡企業 |
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クラフツ |
東京都 |
未上場 |
化学業界 |
譲受企業 |
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日本産業推進機構運営ファンド |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
NSSK(東京)は、6月に世界的な軟包装メーカーであるCrafts(東京)と、両社が運営するファンドを通じて財務・業務提携を行い、経営陣はそのまま法人の運営をします。NSSKは、独自の経営満足パッケージである「NVP」などを活用し、提供します。設備拡張、顧客拡大、経営の見える化などの企業経営手法の導入に向けた投資を支援する。設備拡張投資、顧客基盤の強化、経営の見える化などの経営管理手法の導入を支援します。
■2022年5月にマーキュリア日本成長支援2号投資事業有限責任組合がミューチュアルを買収
譲渡企業 |
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ミューチュアル |
大阪府 |
東証スタンダード |
機械業界 |
譲受企業 |
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マーキュリア日本成長支援2号投資事業有限責任組合 |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
マーキュリアホールディングスの下部組織であるマーキュリアインベストメント(東京)が運営するマーキュリア日本産業成長支援投資事業有限責任組合は、医療用医薬品、化粧品、食品などの包装機械メーカーとして東京証券取引所に上場しているミューチュアル社の取締役会から認可を取得しました。同機構は、6,451,762株(取得後の保有比率100%)、議決権比率3分の2に相当する4,301,200株(66.67%)を下限とし、上限を設けない買い取りを推奨しています。取得価額は約11,613百万円、取得関連費用を含めると約11,739百万円を見込んでいます。取得期間は、5月23日から7月14日までの39営業日。90%以上の株式を取得した場合は株式売却を申し入れ、90%未満の場合は株式併合を実施する予定。相互は、今後、グローバルな販売オペレーション体制を構築し、マーキュリアインベストメントのコントロール能力を生かしたスキームを構築し、今後、行政の改革に着手し、鋭意事業を拡大していく予定です。
■2022年5月に新生企業投資がコモドソリューションズを買収
譲渡企業 |
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コモドソリューションズ |
東京都 |
未上場 |
ソフト・情報業界 |
譲受企業 |
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新生企業投資 |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
新生銀行の全額出資子会社の新生企業投資(東京)は、設立したCSホールディングス(同)を通じて、ITシステムコンサルティング、設計・開発・構築・保守・運用サービスのコモドソリューションズ(同)を買収、創業者から全株式を取得しました。新会社への出資は、経営・業務管理体制の整備を直接支援するものです。
■2022年3月に前澤ファンドがGEOOVE Xを買収
譲渡企業 |
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GEOOVE X |
東京都 |
未上場 |
電機業界 |
譲受企業 |
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前澤ファンド |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
ZOZOの生みの親である前澤友作氏の資金を扱う前澤ファンド(東京)は3月中旬までに、ロボット事業者「GROOVE X」の株式をINCJなど多数の投機筋から大量取得し、4月上旬までに100%子会社化する予定であることを明らかにしました。2015年に設立されたGROOVE Xは、家族向けの機械化補助装置「LOVOT」を構築し、ヘルスケア、情操教育、プログラミング教育の観点から人々の興味を引き、全国の幼稚園、保育事業、小学校などの教育施設、介護の現場、企業で活用されている。このように、前澤さんは国内のロボット産業へも足を踏み入れています。
■2022年1月にエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合が南会西部建設コーポレーションを買収
譲渡企業 |
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南会西部建設コーポレーション |
福島県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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エンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合 |
東京都 |
未上場 |
その他金融業界 |
エンデバー・ユナイテッド(東京)が代表・運営するエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合は、2021年12月24日に南愛西武建設株式会社(福島県会津若松市)の全株式を取得しました。植田正勝社長は退任し、植村賢二氏が 社長に就任嶋氏が就任しました。エンデバーは、同社の経営基盤の改善を後押ししていきます。
目次
投資ファンドとは?
投資ファンドとは、出資者からお金を集めて投資を行ったうえで運用し、出資額に応じて利益を投資者へ分配する団体(ビーグル)のことです。投資先もさまざまで、不動産や上場株式、非公開株式、債券、その他金融商品などがあげられます。
また投資ファンドの種類として下記のようなものがあります。
- 投資信託(投資信託ファンド:証券投資信託)
- ヘッジファンド
- アクティビストファンド
- バイアウトファンド(狭義ではPEファンド)
- ベンチャーキャピタル(広義ではPEファンドに含まれる)
- 企業再生ファンド(広義ではPEファンドに含まれる)
バイアウトファンドやベンチャーキャピタル、企業再生ファンドはPEファンドに分類されます。
PEファンドはPrivate Equity(プライベート・エクイティ)ファンドの略で、機関投資家や個人投資家から資金を集めて未上場企業に投資をしていきます。PEファンドは広義では、未上場企業への投資全般を指す言葉です。しかし、狭義ではPEファンドの中心となっているバイアウトファンドのことを指します。
投資信託(投資信託ファンド:証券投資信託)
投資信託は、投資ファンドとして最も有名で、投資家から集めたお金をプロに任せて運用します。証券会社や銀行などを通して個人の一般投資家も投資信託へ参加することが可能です(公募投信)。数百円といった安い金額からでも投資を行っていけます。
基本的には株式や債券などの伝統的資産を中心に投資を行っていき、運用益は出資額に応じて投資家へ分配していきます。さまざまな投資商品に分散投資を行い、ローリスクでの運用が多い点が特徴です。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、上場株式や債券、不動産、その他あらゆる金融商品へ投資を行います。プロに運用を任せるという点では投資信託と同じです。「売り」ポジションでも「買い」ポジションからでも取引を行い、相場の上げ下げに関係なく利益獲得を目指していく特徴があります。
ヘッジファンドへ投資ができる人は機関投資家や大口投資家などに限られており(私募投信)、一般の投資家が参加することはできません。
アクティビストファンド
アクティビストファンドは、積極的に投資先の企業に働きかける通称「モノいい株主」として知られているファンドです。上場している企業に投資を行いますが、対象企業の株式を多数取得し、株主としての権利や権限を行使できる状態にします。企業価値を高めてから売却をして利益獲得をねらいます。
PEファンド
前述したように、PEファンドは未上場の株式に投資するファンドです。
M&Aや事業承継ではPEファンドが事業の買い手として関わることが少なくありません。PEファンドによる買収の多くは、50%以上の株式を取得して、経営権を獲得(ハンズオン)します。投資先の会社の経営に積極的に関わり、株式の価値を高める取り組み(バリューアップ)を行ってから売却や新規株式公開(IPO)することで、内部収益率(IRR)の向上をねらうのです。ベンチャーキャピタルの場合は経営にあまり関与しないことも多いですが、未上場企業に投資していくという点でPEファンドに含まれています。
PEファンドの運営元は、経営者の派遣や投資先企業の経営課題の解決を図ることが中心です。M&Aでは譲渡先を事業会社にすることもよく検討されますが、ファンドにするか事業会社にするかは下記のような違いがあります。
ファンド | 事業会社 | |
---|---|---|
主に得られる資源 | 経営ノウハウ・資金など | 設備・人材・販路など |
主なメリット | 経営の安定化や経営課題の解決、企業価値の向上 | シナジー効果 |
M&AにおけるPEファンド
M&Aや事業承継におけるファンドは未上場の株式を主な投資先にしています。つまり、前述したPEファンドがメインです。PEファンドは下記のような種類があります。
- ベンチャーキャピタル
- バイアウトファンド
- 企業再生ファンド
- MBOファンド
これらの中でも事業承継で中心になるのはハンズオンを行うバイアウトファンドと企業再生ファンドです。それぞれについて詳しくみていきましょう。
ベンチャーキャピタ(VC)
ベンチャーキャピタルは、未上場かつ創業期にあたるベンチャー企業(新興企業)に投資を行い、将来投資先の企業がIPOした際に株式の売却をねらいます。経営権の取得は積極的にねらわず、株式も数%〜十数%ほどしか投資を行いません。経営への関与も少なく、多数の企業に投資を行っていきます。1つの企業での成功率は高くありませんが、成功したときのリターンが大きいので、10社のうち1社を当てればOKというようなイメージです。ハイリスク・ハイリターンといった手法といえるでしょう。
バイアウトファンド
バイアウトファンドは、PEファンドで中心になっているファンドであり、「PEファンド」=「バイアウトファンド」と認識されることも多いです。
バイアウトファンドは創業期を終えて成長・成熟期に入り事業が安定してきた企業へ投資を行っていきます。バイアウトファンドは多数株式を取得してハンズオンを行い、企業価値をあげてから売却をねらうバイアウト投資と、ハンズオンせずに20%〜40%の株式を取得するグロース投資に分けられます。
金融機関や年金基金など規模の大きいところが投資家としてあげられるのが特徴です。
企業再生ファンド
企業再生ファンドは、その名の通り衰退期や再生期の破綻した企業の再生局面で投資を行っていきます。バイアウトファンドと同様にハンズオンするために多数株式を取得し、株式価値を高めてから売却を行います。衰退期にあたる企業の立て直しをねらいますが、失敗して大きな損失を生むこともあるためハイリスクな投資といえるでしょう。一方で、立て直しに成功したときのインパクトは大きいです。
MBOファンド
MBOとはマネジメントバイアウトの略で、自社株を買収して事業承継を行おうとする経営陣に対して出資を行うファンドです。MBOした後は経営者への経営監督を行い、バリューアップを図ってから売却することで利益をねらいます。
バイアウトファンドは買収企業へ直接投資を行うのに対して、MBOファンドは事業承継を行おうとする経営者へ投資を行う点がポイントです。MBOによる事業承継の多くは、すでに会社に携わっていた人材がオーナー後継者となるため、事業を大きく変えずに会社を引き渡せます。M&A後に社員が辞めていくといった事態を引き起こしにくいです。
PEファンドによるM&Aのメリット・デメリット
国内を見てもPEファンドによるM&Aは年々増加しています。2021年には100件以上の買収が行われました。売り手側のメリットやデメリットをみていきましょう。
売却側(会社)のメリット
投資ファンド業界でM&Aが行われるようになってきたのは、下記のような企業にとっての売却メリットがあげられます。
- 株式を現金化できる
- 経営ノウハウを吸収できる
- オーナーの後継者問題を解決できる
- ロールアップ戦略などで事業拡大ができる
- 個人保証から解放される
それぞれ解説します。
株式を現金化できる
PEファンドを使う最大の利点は、株式を現金化して多額の資金提供を受けられる点です。資金調達に苦戦を強いられていた企業にとっては非常に魅力的で、企業価値向上のために今後も資金を回していけます。
また、PEファンド売却で得た資金は借入金ではないので、返済する必要がありません。
経営ノウハウを吸収できる
経営が窮地に立たされていたり、今後の経営戦略を模索していたりする場合には、投資ファンドからM&Aをされることで経営ノウハウを得られるメリットがあります。
投資ファンドの目的は企業価値を高めることで、第三者の視点で合理的に深く経営に関与してくます。
経営ノウハウを獲得することで、経営が安定して会社も成長していくと、会社全体のさらなるモチベーションにもなるでしょう。
オーナーの後継者問題を解決できる
企業のオーナー経営者が高齢かつ会社を残したいものの、親族内に後継者になれる人がいない場合は、後継者問題を抱えることになります。主に中小企業のオーナーに多い問題です。こういった事業承継のニーズがあると、経営に参加して経営課題の解決を図ってくれるPEファンドには非常に期待できるでしょう。PEファンドがその事業にM&Aを行い、オーナーから会社を引き継いでくれるので、オーナーは後継者問題を解決できます。
また、後継者はいるもののその後継者が株式を取得できる十分な資金がない場合でも、PEファンドは資金面のサポートをしてくれます(MBO)。結果として経営者は安心して後継者に事業承継を行うことが可能になるのです。
ロールアップ戦略などで事業拡大ができる
ロールアップ戦略とは、投資先からさらに連続的に買収を行い、シナジー効果によって利益を拡大させるための戦略です。会社としては、短期間での規模の拡大やサービスの向上が期待できます。
投資ファンドは、母体となって同業種の比較的小さな会社を複数社買収して、吸収合併させるロールアップ戦略を用いることがあります。ロールアップ戦略が成功すると、業界内でのシェアも拡大して企業価値も高まります。
個人保証から解放される
オーナーの中にはこれまでの事業のために金融機関から借り入れをした際、連帯保証人を自分にする個人保証を提供した人も多いでしょう。
投資ファンドにM&Aをされると、経営権の譲渡と一緒に個人保証から外れられます。債務を抱えていたり、個人保証を負担に感じていたりするオーナーは肩の荷を降ろせます。
ただ、投資ファンドからのM&Aで必ず個人保証や債務を引き継ぐことができるわけではない点には注意しましょう。
買収されるデメリット
一方で、投資ファンドに買収をされたときにリスクになりうることもあります。ここでは買収されるデメリットを紹介します。
- 事業縮小や人員削減の可能性がある
- 企業文化の変化がある
- 従業員の反発や離職につながることがある
- 後々Exit(イグジット)がある
それぞれについて解説します。
事業縮小や人員削減の可能性がある
投資ファンドから派遣される経営陣は、利益追求を優先して合理的な経営を行っていきます。そのため、ノンコア事業の規模を縮小してコア事業に注力したり、人件費などコストカットを行ったりします。ただし、人員削減のような強烈な方法は余程のことがない限り実施されないです。また、買収後の従業員の雇用については、ファンド側と売却企業側の双方の合意で決まるので、事前に雇用に関する取り決めができます。
企業文化の変化がある
投資ファンドが経営に関わることによって、これまで築きあげてきた企業文化が崩れていく可能性は否定できません。投資ファンドは前述したように、経営の合理化のためにさまざまなテコ入れを行います。
また、ロールアップ戦略などで別の会社と合併した場合は、合併先の企業文化が入ってくることになります。
従業員の反発や離職につながることがある
投資ファンド側の人とそりが合わなかったり、方向性に納得がいかなかったりする従業員も出てくるかもしれません。不満が溜まり続けると、これまでの長期間勤めてきた従業員も辞めてしまう場合も考えられます。
後々Exit(イグジット)がある
PEファンドは、バリューアップを行った後に必ず投資回収を行います。これをExit(イグジット)と呼びます。イグジットは、保有していた株の売却もしくはIPOを行うことが一般的です。数年後にイグジットが行われると、株主がわかり経営権も新しい買い手に移るので、その際に経営陣は交代することが多いです。イグジットまでの目安期間は5年ほどといわれています。
PEファンドに売却を行うには?
実際にPEファンドに会社を売却する場合は下記の流れですすめていきます。
- PEファンドの選定
- 資料作成
- 面談
- 条件交渉(価格、時期、従業員の雇用、役員の待遇など)
- デューデリジェンス
- 最終契約交渉
- クロージング(決済、株式の授受、株主名簿の書き換えなど)
売却の成功を決めるポイントは、豊富な知識をもつM&Aのアドバイザーに手助けをしてもらうことです。売却までの流れは上記の手続きですが、企業や状況ごとに取り決めすべきことは異なり、非常に複雑な過程を経ることになります。
- ファンドがどのような経営戦略でバリューアップ、イグジットを行うのか?
- どれくらいのスパンで経営に関与するのか?
- 経営への関与度合いはどれくらいなのか?
このあたりを事前にしっかり確認して、双方納得しておく必要があります。
また、事前調査(デューデリジェンス)をしっかりと行い、ファンド側と後々トラブルになることを避けましょう。