ネットワークのインフラ設計、構築、運用、施工工事までを行う株式会社exus(エクサス)は、2014年に津村篤史氏が創業した会社です。業績も順調のなか、若くしてM&Aを選択されたのは”飲食店経営”という自身にとって長年の夢を実現するため。その夢を叶えるにもタイミングを慎重に見極めたとのことですが、後押しとなったのは、「この会社は確実に成長していく」という自社が持つポテンシャルへの自信、そして苦楽を共にしてきた従業員の皆様に対する信頼とのことでした。株式会社ジーシーシーとのM&A、その舞台裏をインタビューを通してお伺いします。
[譲渡企業]
株式会社exus
(本社:東京都品川区)
https://www.exus-inc.jp/
2014年に現在会長を務める津村篤史氏が創業した株式会社exusは、ネットワークとサーバーの設計・構築、電気・通信工事までを手がける会社です。津村氏は飲食店を経営するという自身の夢を叶えるため、2024年10月に株式会社ジーシーシーとのM&Aを選択。
[譲受企業]
株式会社ジーシーシー
(本社:群馬県前橋市)
https://www.gcc.co.jp/
1965年に北関東における最初の情報処理専門企業として創業した株式会社ジーシーシー。「日常に感動を、感動を日常に」を企業理念とし、公共向けアプリケーションの開発・提供メインとしている。2024年10月に初となるM&Aを実現し、株式会社exusと資本業務提携を結ぶ。
自身は夢を叶えるために、会社は更なる発展のために
株式会社exusの事業内容について教えてください。
津村 様:事業内容としましては、ネットワークのインフラ設計、構築、運用、施工工事までを行っております。要件定義で要望をお伝えいただければ、施工工事までワンストップでお任せいただけるのが特徴です。従業員数としては2024年11月現在で30名超といったところです。
それでは、創業経緯をお聞かせください。
津村 様:元々はサラリーマンとして派遣会社に勤務していました。当時は、派遣スタッフが人材派遣会社との間に常時雇用契約を結んだ後、派遣先企業に案件ごとに就業できる「特定労働者派遣事業(※2015年に廃止)」が導入されたタイミングで、勤めていた会社にも特定派遣事業部が新設されたのです。
私がエンジニア出身でITに明るかったものですから、派遣している社員を管理するという立場で私も出向する形になりました。ただ、当時は私も若かったこともあり、出向と左遷の違いを理解していませんでした。いつ戻れるのか、キャリアはどうなるのか、出向という形で働いている自分の将来に不安を抱いているなかで、独立して個人事業主になる選択をしたのです。その後、依頼が増えて従業員を抱えないと難しくなってきたのと同時に、会社を立ち上げました。それが、exusの創業経緯となります。
exusという社名に込められた想いとは。
津村 様:exusというのは「excellence(優秀)」と「nexus(結びつき)」をかけ合わせた造語になります。自分が会社を立ち上げるとういう意識よりも、創業時のメンバー全員で会社を作るイメージを持っていたので、いくつかのアイデアから多数決で選んだのは良い思い出です。
私は派遣会社に勤務していた時代に、社員さんと派遣社員さんの間に”壁”を感じることが多かったので、自分の会社ではそういった”壁”を完全に取っ払いたいと考えており、若手も躊躇いなく意見を言える関係性を目指しました。そういった意味でもこの「nexus」は色濃く社風に出ていると感じております。
成約時よりも大きな相乗効果をイメージできている
後継者や事業承継を考えるうえで、M&Aは選択肢に元々ありましたか。
津村 様:よくM&Aで耳にする、後継者不在というテーマでのM&Aは年齢的にもまだ考えていませんでした。ただ、私はお酒が好きなものですから、飲食業、具体的に言えばバーを経営することが長年の夢であり、今回はそれを実現するためのM&Aになります。経営の大変さを理解している分、両方抱えては不可能だと感じていたので、計画的なM&Aと言えます。
本当はコロナの時期に飲食店を買収してスタートするプランも考えたのですが、exusもコロナの影響で先行きが不透明な部分もあり、本業に専念する選択をしました。しかし、今となって考えると、その選択は正しかったと感じますね。コロナの時期で改めて当社を見つめ直したことで、創業10年目にしてexusの強みや特性が明確になりました。「この会社は絶対に伸びる。」それを確信したことで、会社の譲渡に向けてより前向きに動くことができました。
M&Aを進めるうえでお相手選びで重視されたことは。
津村 様:私は飲食店の経営という夢を叶えるためのM&Aになりますので、譲受企業様には私が残ることを要望として出しておりません。包み隠さずお話しておりますので、そこを理解してくださる会社様でないと成立は難しいと考えていました。
また、exusが今後確実に伸びるという自信があるからこそ、その魅力・ポテンシャルを理解してくださる会社様に譲渡するのは必須条件でした。経営的にも順調でしたので、急いで手放す必要もありません。そういった会社様に出会えなければ、まだ自分で経営するという選択をしていたと思います。
ジーシーシー様を選ばれた決め手はどこにありましたか。
津村 様:いくつもの会社様とお話しするなかで、ジーシーシー様には私の夢もポジティブに捉えていただけました。exusという会社の強みや、成長ポテンシャルを高く評価していただけたのが大きかったですね。また、当社では近い将来、データセンターを持ちたいと考えていたので、ジーシーシー様が大規模なデータセンターを所有していることから、より成長を加速してもらえるイメージが湧きました。
今回のM&Aで期待できる相乗効果はありますか。
津村 様:成約したときと比較しても、現在の方が相乗効果への期待が大きいです。ジーシーシー様は東京にも進出されていますが、本社が群馬県前橋市にあるということで、東京都内で対応できる範囲には限りがあります。その課題を聞いていると、まさに当社が強みとしている部分だったんですよね。今まで東京都内で対応しきれなかったクライアント様にご紹介いただければ、当社の仕事は増加します。一方でジーシーシー様は都内での受注実績も大幅に増加するでしょうし、相乗効果を期待できます。
PMIの最中ですが、現状は非常にポジティブです。従業員数が700名近い(※2024年11月時点)大きな会社様ですが、「今まで通りやってください」と言っていただき、リスペクトいただいているように深く感じております。お互いの足りない部分を補い合えるという期待感についてはよく話しているので、これからが楽しみです。
M&Aを社員の皆様に報告した際、反応はいかがでしたか。
津村 様:「鳩が豆鉄砲を食ったよう」とはまさにこのことを言うのでしょう。従業員にも全く言っておりませんでしたので、何人かは気持ちの整理がついていないようでした。しかし、「俺ではないんだ。exusのために尽くしてくれ。」という本心を伝えていますので、驚きながらも受け入れてくれたように感じています。
劉さんは進むべき方向を明確に、共にハンドルを握ってくれた
M&Aロイヤルアドバイザリーのコンサルタントはいかがでしたか?
津村 様:本当に良い仕事をしていただいたと、感謝しております。我々経営者も普段の仕事にプラスしてM&Aに向けた準備が発生するため非常に大変なのですが、劉さんはいつも気を遣いながら、進むべき方向を明確に示しながら、共にハンドルを握っていただいている印象でした。当然、私にとっては初めてのM&Aになりますので、ひとつひとつ丁寧に説明しながら納得感を持って進めてくださる劉さんの進め方は相性の部分でも合っているように思えます。常に親身になって相談に乗っていただき、信頼感・安心感がありましたね。
劉(担当コンサルタント):今回は最初にお話をいただいてから、約4か月で成約とスピーディーに進んだM&Aでした。津村社長とは密にコミュニケーションをとらせていただいたからこそ、どのような想いでM&Aを選択されているかを私も理解していたつもりです。
スピーディーな対応が求められる場面もありましたが、津村社長が本業の合間を縫って迅速にご対応いただけたからこそ、短期間でご成約に至ることができたと感じております。今では事業の強みを両社が活かしながら、順調に協業体制を構築できていると伺っており、仲介としては冥利に尽きる思いです。
将来、会社も変化していくなかで残したいものはありますか。
津村 様:正直なところ、会社を譲渡してからはあまり口を出すべきではないというのが個人的な考えです。もちろん、当社をより成長、発展させてくださる会社様に託したつもりですので、ジーシーシー様がどういう会社に成長させてくださるかを楽しみにしております。今まで私1人で経営していたexusが、ジーシーシー様という大きな会社の傘下に入ることで、ポジティブな変化があると思います。間違いなく、経営基盤は安定しますので、社員の満足度も上がる結果に繋がれば嬉しいです。
津村様と同じく、M&Aを検討されているオーナー様に伝えたいことはありますか。
津村 様:私はM&Aも他の売買と一緒だと考えています。車を買いたいとき、家を買いたいとき、個人ではなくディーラーや不動産会社にまずは相談しますよね。結局は餅は餅屋なのです。会社もその一つで、M&Aロイヤルアドバイザリーさんに任せれば確実になるという感覚で依頼しました。M&A仲介会社は手数料が高いという声があるのも理解していますが、安心を買えると思えば必要経費ではないでしょうか。
今後の目標・プラン等があれば教えてください。
津村 様:バーを経営するという目標はありますが、時期は未定で、まずはexusに集中したいと思います。バーを出店する場所は銀座を予定していて、どこで名前を出しても恥ずかしくない、お酒だけでなく、サービスを含めて納得感の強いお店を目指します。素晴らしいお店にしますので、オープンする際には是非ともよろしくお願い致します。(笑)